📚中小企業診断士～2次筆記試験に合格できた理由を考える～

はじめに

2025年1月15日、令和６年度の中小企業診断士２次筆記試験の結果発表がありました。
結果はなんと無事通過。

正しい知識をもとに情報発信したいと思い、一念発起。
勉強開始は2023年12月26日、２次試験まで10か月の短期集中での挑戦でした。

まだ最後の関門、２次口述試験が残っていますが、記憶が新しいうちに、なぜ合格できたのかを自分なりに整理して記事として残しておきたいと思います。

この記事では、令和６年度の中小企業診断士２次筆記試験の経験をもとに、合格に必要な力を鍛えるにあたって重要だと感じたことを、教訓も加えて、まとめています。

『これから中小企業診断士を受験しようとされている方』や『令和６年度の合格をあと一歩でつかめなかった方』、かならず何かヒントが見つかるはずです。

結論：重要だと感じたこと

試験時間80分の使い方

• 全事例共通
  • 開始直後｜メモ用紙を切り取る。事例Ⅳは2枚あるはず。定規持ち込み可。
  • まず｜『各問いの分析』と『再構築』。この段階で回答の外枠・骨子が決まる。
  • 次に｜与件文の解読・仕訳。再構築した問いで固まった枠組みに沿って、要素を拾う。
  • 最後に｜問い分析の結果と与件文仕訳の結果を統合し、回答を書く。
• 事例Ⅳ
  • 各大問に時間を配分し、配分時間内で必ず切り上げる。満点を目指さない。（教訓）
  • 注１｜計算欄は最大限活用。わかることを何でも書く。部分点は必ず拾う。
  • 注２｜最後まであきらめない。

２次筆記試験で必要な力

• 企業診断に必要な観点・論点・打ち手などのアウトプット力
• 企業診断の問題設定力・観点構築力
• 企業診断観点での情報仕訳力・情報整理力

アウトプット力

２次試験で強烈に印象に残っているのは、時間の短さ。

ゆっくり考える、というよりも、反射的に関連する観点や利点・欠点・留意点がざっと出てくるレベルでないと対応できない、というのが正直な感想です。

逆に言えば、これがしっかりできてくると時間内で十分対応ができるようになります。
（事例Ⅳは別の星の生き物です。）

１次試験では問題文を見ながら、正誤できればよいので、インプットがあれば対応できます。
一方、２次試験では問題文にある情報以外の情報を頭から引き出してこなければいけません。

２次試験の対策に必要なもののひとつはこのアウトプットする力、スピード、反射神経です。

問題設定力・観点構築力

２次試験の対策開始時は、与件文を読み、問題文を読んで、解いていくスタイルでした。
このスタイルでは、どうも安定して回答が作れない。。

そこで買ったテキストをしっかりと読んでヒントを探してみたところ。
まずは問題文を分析する、というワザがあることを知りました。

じっくりと考える猶予、ページを行ったり来たりする猶予が与えられていない試験です。
効率的に戦略を立てて、解く必要があったんですね。

問題文は抽象度や粒度・解像度がそれぞればらばら。
そのまま回答を作ろうとしてもどうもうまくいきません。

そこで必要になるのが、問題文を分解したり、再構築したり、自分なりにわかる問いに変換する力です。
2次試験の通過で必要な力の2つ目は、この問題設定力・観点構築力です。

情報仕訳力・情報整理力

財務会計含め、問題文がややこしく長い。。
必要な要素を抜き出して、整理する力が必要になってきます。

簿記に触れたことがある方ならおなじみの仕訳処理。
この仕訳処理の力が２次試験全体で問われているような気がしているのは私だけでしょうか。

２次試験合格に必要な力の３つ目は、情報仕訳力・情報整理力です。

おすすめのトレーニング

事例Ⅰ～Ⅳ（共通）

#	トレーニング	目的
①	1年分の過去問（全４事例）を制限時間で解く。	試験の雰囲気・難易度を感じる。
②	１．で解いた各事例の与件文をもとに、事例企業について文章やポンチ絵を使い整理しまとめる。	与件文に書かれていることを丁寧に確認し、与件文の構成や特徴を把握する。
③	【アウトプット力の養成】 学んだ知識・キーワードを1問1答で即答できるまで暗唱・反復する。	異なる粒度や解像度の問いを一定水準の問いに短時間で変換するための基礎力養成。
④	【問題設定力・観点構築力の養成】 事例ごとに過去問の問題文の分析と再構築だけを10年分行う。（仕上用に数年分は残す）	・事例ごとの問題文の特徴・傾向を掴む。 ・異なる粒度や解像度の問いを一定水準の問いに短時間で変換する力をつける。
⑤	【情報仕訳力・情報整理力の養成】 事例ごとに過去問の与件文の読解と要素仕訳作業だけを10年分行う。（仕上用に数年分は残す）	・事例ごとの与件文の特徴・傾向を掴む。 ・与件文から事例企業の状況を短時間で正確かつ的確に把握する力をつける。
⑥	問題文と与件文の分析・読解トレーニングに使用した過去問を本番設定でやりきる。	問題の処理手続きの定着と自信をつける。
⑦	仕上げ用にやらずに数年分残しておいた過去問を本番設定でやりきる。	①～⑥でつけた力の確認と手順の最終確認
⑧	時間が余れば、③～⑤を2週目・3週目を行う。	合格力の定着と更なる向上

事例Ⅳ

『中小企業診断士2次試験　試験30日完成！事例4合格点突破計算問題集（杉山 淳）』をやりこむ。
間違えた問題のポイントや新たなに学んだ知識などはメモに残して、まとめておき、定期的に復習。

トレーニングの具体的なイメージ

アウトプット力の養成

中小企業診断士の経営戦略・運営管理・財務会計のテキスト等をもとに自分の言葉で教材を作成。
キーワードを見て、説明を暗唱できるようになるまで繰り返しました。

コピー用紙に手書きで教材を作成しました。
イメージは以下のような形です。

＃	キーワード	説明・分解
	【経営全般・共通】
１	成長戦略の具体的な要素６つ	新用途の発見、新技術の開発、新市場の開拓、他業種との提携、M＆A、多角化
２	多角化戦略が経済価値を持つために必要な要素２つ	・事業間に範囲の経済性が存在していること ・範囲の経済性を実現する上で、多角化の方が、他社提携などよりも低コストで済むこと
	・・・	・・・
	【組織・人事】
１	外注の目的３つ /メリット３つ /デメリット4つ	コア業務への経営資源の集中、専門性の確保、コストの削減/自社にない専門知識や固有技術の獲得、固定資産や人材確保不要による固定費の削減、資金流動化と資本効率向上/品質管理が難しい、 機密情報・ノウハウの漏洩リスク、業務理解の不足によるブラックボックス化、関連部署での人員削減に伴い士気低下・サービス水準低下
	・・・	・・・
	【マーケティング】
１	売上の分解	売上＝客数×客単価 客数＝顧客数×来店頻度 顧客数＝新規＋既存 客単価＝買い上げ点数×平均商品単価
２	利益の分解	・・・

問題設定力・観点構築力の養成

以下、令和６年度の事例Ⅱの第1問と第2問の抜粋です。
問題文の分析の過程でおこなったマークとメモのイメージです。

以下のような形で問題文を分析・分解・再構築し、回答の大枠・骨子を作っていきます。
この要領で、事例ごとに10年分を問題文処理だけを行い、回答プロセスを身につけていきました。

第１問

第１問では、「まずは現状の話ね」、と理解し進みはじめる。
次に、SWOT分析と書いてあるので、この時点で、『ヒト・モノ・カネ・情報（ノウハウ）』という観点で与件文を読んで、S：強み、W:弱み、O：機会、T：脅威 を拾っていこうと考えています。

第２問

第２問では、回答に込めるべき要件をピックアップしつつ、メモ。

与件文を読む前ですが、ふるさと納税？返礼品？X焼？。。
陶器とか焼き物の話なんだな、陶芸家か？小売か？卸か？と考えて読んでいます。

X焼きを返礼品に使用しているがあまり目立ってないから、目立たせて、ファンを増やしたい。だから企画を提案してほしいんだな、X焼きだけじゃなくて、市ともコラボして両方を際立たせたいんだな、と。

最後に、感覚価値と観念価値とあるので、見た感じの雰囲気の要素と何かしらのストーリ性を持たせる企画にしないといけないんだなと思いながら、問題文を読み切ります。

ここで終わりではなくて、この時点で企画の骨子をざっくり考えてみます。

インターネット（YoutubeとかInstagramとか）を使って、デザイン性高く、おしゃれに目立たせる感じでいこうか、また、市とのコラボも必要だから、市の資源、例えば、レストランとかで使ってみたり。陶器づくりの工程なんかをかっこよく動画にしてみたらいいんじゃないか。体験型もありだな。。

みたいなことを考えて、大枠・骨子メモとして残しておきました。

情報仕訳力・情報整理力の養成

問題文を読みといた後、そのままの頭で与件文の解読に突入します。
以下、令和６年度事例Ⅱの与件文からの抜粋と受験生の頭の中です。

この要領で、事例ごとに10年分の問題文処理を行い、回答プロセスを身につけていきました。

まとめ

中小企業診断士の２次筆記試験は『戦略的なプロセス構築とトレーニングの計画・実施』が必要というお話でした。

２次筆記試験は試験勉強と考えて取り組むよりも、企業診断には何が必要か、どのようなプロセスで実施されるのか、をイメージし、それを踏まえて取り組む方が近道なのかもしれません。

以下では、10か月・独学・一発・ストレート合格を実現させてくれた、教材を挙げています。
多くの諸先輩方の情報発信のおかげでこの合格を掴むことができました。

同じように、この記事が 診断士を志す みなさんの力になれば幸いです。

おまけ１　～5万円分の購入教材リスト～

おまけ２　～事例Ⅳ、地獄の80分。～

ここまで受かった理由らしきことを偉そうにつらつらと書いてきました。
が、実は２次試験終了以降、発表直前まで、事例Ⅳでの足切りの恐怖と闘う日々でした。

　　

２次試験の日。

事前の準備が功を奏したのか、事例ⅠからⅢは過去問含めほぼ一番の出来。（妄想）
残る事例Ⅳをなんとか乗り越えたら合格できる、と思いきや。思いきや。。

事例Ⅳは50点でよかった、それでよかったのに、と準備不足の自分をなんど責めたことか。

事例Ⅳの第２問。条件が拾い切れておらず、出た答え、何かがおかしい。。
ここで完全にスタック。。
落ちることが頭に浮かび心拍数が急上昇。
何度解きなおしても答えがおかしい。
泥沼にはまった瞬間でした。
気づけば残り30分。

時間がないから無理、今日はもうあきらめようか。
散々勉強してきたのに・・・。勉強ばかりの日々を許してくれた嫁にも合わせる顔がない。。

運良く、「ここで建て直せたらきっと成長できる」と、この最悪の瞬間に、超前向きな心の声が。
半泣き、どころか、泣きながら、第２問は部分点狙いに切り替え、第３問へ。
このとき、心臓はバクバク、手も震え、絶望の淵をただ意志の力だけで立っている状況。
呼吸が浅く、酸素が足りない。もうろうとして、心拍数もおさまらない・・。

第３問、問題文が長い・・・。やはり今年はもう終わりなのか・・・。
焦っていて、まともな思考は不可能。とりあえず条件を拾って必死に計算。
なんとか答えを出す。時間がない。。ここも部分点を狙い次へ。

第４問。
最初からここをやっておけばよかった、と後悔と絶望の大波が押し寄せる中、なんとか答えを書き終え試験終了。

会場から一刻も早く出たい。
逃げたい気持ちが最高潮。

終了後、いろいろと振り返りはじめ、あの問題はこう書いておいた方がよかった、とか、あーでもないこーでもない。。と近くのパーキングまで。

回答速報でーす。と元気な声。
気になる、いや見たくない。見るのが怖い。
なんとなく誰にも会いたくない、くらいの気持ち。

はて⁉
パーキング横の別の駐車場には、お行儀よく座り、こちらを眺める黒猫。
なんの知らせか。
何とか引っかかったのか。。
ソレトモ、なぐさめに来てくれたのか。。

帰りの車では涙が流れてくる始末。。
そして道を間違える。。早く帰りたい。